MONTBLANC マイスターシュティック ボールペン

MONTBLANCのマイスターシュティックというボールペンをまたオーバーホールに出した。銀座の三越のMONTBLANC BOUTIQUEで費用が16,000円ほどかかる。『また』というように、実は前回もやっていて、そのくらいお金がかかるのは予め知っていた。初回は驚いて筆記具の修理にそれだけの大枚を叩くことに内心躊躇したのだが、銀座の空気の飲まれてしまった。『16,000円なんてなんてことないね』と言わんかばかりか、虚勢を張って何食わぬ顔をしてお願いしてしまった。いや、店員さんには僕の心の中の動揺を見抜かれていたのかも知れないが…。まぁ今回はそれだけお金がかかるとわかってお願いしてきた。

オーバーホールといっても、ボールペンは万年筆と違ってそこまで複雑な機構を持っていない。ボールペンはインク交換時にペン先ごとアッセンブリー交換なワケだから、むしろ本体はリフィルのインクの方で。本体に見える部分は、リフィルを支えるグリップに過ぎない。筆記具の主たる目的である『書く』という行為に深く関連する機構が本体にはないにもかかわらず、それだけのお金をかけるのは愚かしい事だ。本体の役割は筆記時のグリップの他に、ペン先を収納するための格納機構が備わっている。ペン軸を回すと、先っぽからペン先が出てきたり、引っ込んだりする。その収納機能が滑らかに動かなくなったのだ。たったのそれだけのために16,000円も払うのだ。

でも、前回マイスターシュティック スモールサイズをオーバーホールしたワケなんだけど、とても滑らかに動作するようになったのですよ。ちょっとペン軸を回すと、僅かなガタもなく適度な心地よい重みで回転して、『ヌッ』とペン先が現れる。使い終わったあとに、わずかにチカラを加えると、『スルッ』と音もなく収納される。まるでよく手入れされたクラシックレンズのフォーカスリングを回す感じに似ている。ヘリコイドが噛み合ってヌルヌルと鏡胴が伸び縮みする感じ。アレにやられた。あの心地よさをミディアムサイズにも蘇らせたい、と思ってしまった。オーバーホール直後のマイスターシュティック スモールサイズに比べると、普段使っているミディアムサイズがアソビが大きく、動きが滑らかでない。いままではそれが普通だと思っていたのに…。まんまとやられたワケだが、大変心地よいマーケティング手法だと思った。良い仕事は新たな仕事を生むのだ。

お金もかかるが時間もかかる。作業には約3週間かかるという。本国のドイツの工場まで送るのだろうか?それとも、日本中に僕と同じようにやられてしまった方々が沢山いるのだろうか?

どちらにせよ、仕上がりが楽しみだ。