財布が出てきた

iPhoneに知らない固定回線から着信があった。03圏内、東京都内からの着信。ヨドバシカメラか?運送会社か?知らない番号からの着信はタイミングによって大体予想がつく。

ひょっとしたら警察署からかも?財布を紛失した際に、遺失物届けをだしていたので、その連絡だったらいいなぁ。なんて想いながら、しかし過度の期待は禁物なので、その想いを心の奥底にしまい込んで、全くなにも予想していなかった顔をして応答した。もっとも電話なので僕がどんな顔をしていたか、相手に伝わったかどうかはわからない。

予想は当たった。警察署だ。ただし、ドンピシャで見つかった訳ではなく、『それらしき物品があるので、確認したい』との事。まぁもっともな話で。斧を滝壺に落とした際に、金と銀の斧を最初に見せるのは一般的に好ましくない。

特徴などを伝えると、ほぼ間違いないとのことで、なにか自分のモノだと証明する物品を持って署まで行くことになった。今回は鍵が入っていたので、その合鍵をもって行くことになった。

結果は間違いなく僕の財布だった。身分証を出して、受け取りのサインをして、無事に僕の手元に帰ってきた。入っていた小銭も、多分そのままだと思う。

受付の警察官にお礼を言って、拾った方にもよろしくお伝えいただきたかった…のだが、それは叶わぬ願いのようだ。財布が帰ってきたのは良かったが、キチンとお礼が出来ないのはとても残念だ。

この空の下にいる、どこの誰ともわからない親切な方。本当にありがとうございました。きっと財布を拾った際は、あなたの心の中で、天使と悪魔の対立があったのではないかと推測いたしますが、あなたは悪魔をバッサリと斬り捨ててくださいました。この世の中に蔓延る小さな悪魔たちを、個人の利害関係を度外視して、みんなで少しづつ退治してゆければ、きっと社会も良くなっていくのでしょう。

あなたに直接お礼の言葉をお伝えすることはできませんが、僕も心の中に蔓延る小さな悪魔を退治していきたいと思います。

一緒により良い社会を作っていきましょう。