電話工事

さっき、会社に電話工事が来た。配管に線を通していたが、このビルの配管はあまり良い状態ではないようでかなり手こずっていた。最近の屋内配線はメタルではなく、どうやら光ケーブルのようだ。スチールを通さないでもそのまま配管に通せるようで。

だが、それが通らないようで、大分長い時間苦労していた。
まぁなんとか通ったようで、挨拶をして帰ろうとした時、ネットワークが切れてしまったことに気がついて。指摘したところ色々慌てて復旧作業をしていた。

上長はかなりご立腹のご様子だった。サーバがあるとかないとか、賠償問題になるとか、ならないとか。そんな大きな話ではないと思ったが、まぁそれは置いておこう。

電話工事担当者は神妙にして謝っていた。

施工の流れをみていたが、まるで昔の自分をみているようで感慨深いものがあった。
あの当時、僕は電話工事なんてしたくなかった。パソコンを使って仕事がしたいと思っていた。

パソコン使って、なんの仕事をするのか?なんとなく、カチャカチャとキーボードを打ったり、絵や図形を描いたり、そんな仕事がしたいと思っていた。汚れた作業服を着ている自分がみすぼらしいと思っていた。まだ高校を卒業したばかり10代の青年だった僕は、そんな思いを抱えながら電話工事をしていた。今思えば、どん底に近かった。正社員でもなく、属している組織も3〜4人の労働者の集まり。学歴も大した技術もコネもない。そのまま行けば、万年フリーター or ニートまっしぐら。生涯独身で親を看取ったあとは一人で貧しく年老いていくだけの余生を過ごす貧しく惨めな老人になる才能に溢れていた。

しかし、今気がつけば僕は電話工事の時に思っていた、『カチャカチャとキーボードを打ったり、絵や図形を描いたり、そんな仕事がしたい』という希望をしっかりと叶えている。上を見ればキリがないが、まぁ、一応、それなりの給料も貰えている。漠然としていても、夢は願っていれば叶うものなんだろう。

もちろん、今の会社でも不安は多々ある。化粧品の仕事やら、照明の仕事やら、難題は山積みだし、価値観の合わない気難しい上長もいる。でも、電話工事やらOLCやらにいたときのことを考えれば、どれだけマシな環境にいることか。僕ごときが今の地位を獲得できているのは奇跡に近いことなのではないか。

今の環境に満足して、しっかり頑張ろうと思う。そして、次の目標をしっかり心に忍ばせておこう。

僕は、写真を仕事をしたい。もちろんご時世的にカメラマンは厳しい。アートの世界はさらに厳しので、写真家はさらにハードルが高い。何か今の制作の知識を活かして、ハイブリットなカメラマンに慣れないだろうか。また漠然とした希望を心に秘めてしまったが。10年後は実現できているだろうか?