プチ迷子

めいめいがプチ迷子になった。結果的には大事には至らなかったのだが、親である僕らにとっても当人にとっても大冒険だった。

電車で外出した帰り、大泉の駅から自宅まで歩いて帰る途中。めいめいは機嫌よく先を歩いていった。たまにこちらを振り返ってこちらの様子をうかがいながら、どんどん離れて先へ歩いていった。姿が小さくなっていって、いつもの橋のあたりで見えなくなった。

よく歩く道なのでまぁ大丈夫だとは思っていたので、呼び戻さなかったが、姿が見えなくなったあたりで少し不安になった。めいめいの姿を最後に見た橋にたどり着いたが、めいめいの姿はなかった。慣れた道だから先に帰ってしまったのだと思ったが、ここから先は少し車の通りが多い道を横断する。町の様子はいつもと変わらないので事件は何も起きていないのだと思うが、まだひとりで帰っては駄目だと叱った方がいいかな?などと考えながら急ぎ足で家に帰った。…家にはめいめいはいなかった。帰ったら遊びに行く予定だったお友達の家に直接行ってしまったのかと思い、そちらに連絡してみたがめいめいの足取りは掴めなかった。

こりゃマズいと思って、今来た駅までの道を急いで探しに行った。めいめいの姿を最後に見た橋を渡って、駅に続く道を先の方まで見渡した。遠くにめいめいと同い年くらいの子供が見えるがだれか大人に連れられて歩いている。違う子だろうと思って急いで足を進めると…。その子はめいめいだった。

一緒にいた方は、迷子だと思って一緒に僕らを探してくれていたとの事。めいめいも迷子になってしまったと思って、通りがかりの大人に助けを求めたらしい。ちゃんと自分の名前も言えたようだ。

その方にお礼を言って別れて、めいめいと一緒に帰路についた。事情を聴いたら橋を渡ったところで待っていたが、誰もこなかったから不思議に思って、通りがかりの人と一緒に僕らを探していたそうだ。確かに橋の先は見通しが悪く道が別れている。僕らが通った道と反対の方でめいめいは待っていたという訳だ。説明をしながら、めいめいは大きな涙をこぼした。

僕も少し叱ろうと思っていたが、橋の先で道が別れているのだから、反対の方も確認しなかった僕らも悪い。それより、車の通りの多い道を一人で横断せずに僕らをちゃんと待っていた事と、一人で徘徊せずに大人の人に声をかけて僕らを探した事を褒めてあげる事にした。

一人で待っていて僕らがこなかった時、どれほど不安な気持ちだったかは容易に想像できる。知らない人に声をかけて助けを求めた時、どれほどの勇気が必要だったかも同じだ。

時間にしたらほんの10分くらいだろうが、僕らにとっては大冒険だった。こんな小さな大冒険を数えきれないほど繰り返して、子供は大人になっていくのだろう。考えてみれば僕もそうだった。時代は変われど、人間は似たようなことを繰り返して、世代を重ねて来たのだろう。